昔話を語ってみたいと想う・・。
あれは・・ある田舎町で起きた不思議なできごとだった・・。
1990年代のバンドブームで、TVでも音楽番組を多く見ることができた・・。
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当時、私は大学生。
生まれ育った田舎を離れ、一人暮らしを始めていた。
大都会は故郷とは違い、3階建て以上の建物があり、街には汽車も走っている。
1両編成のワンマン汽車で、隣町まであっという間に運んでくれる。
ただ、本数が少ないので、汽車の時刻表には注意が必要だ・・・。
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大学デビューをかなえるためにバンドサークルに入った。
大好きなBOØWYに憧れてギターを手にした。
楽器ができたらモテて、すぐにチェリーを卒業できると信じていた。
サークルはピッキングハーモニクスやライトハンドなどの洋風な言葉が飛び交っている桃源郷!
「ナウいなぁ~」と喜んでいた。
速弾きができると注目してもらえるような雰囲気があり、ハードロックが人気のあるサークルだった。
もちろん私のチェリーを食べて欲しいので速弾きにもトライした。
速弾きだけではなく、「あしたのためのその1」でチェリーも日々鍛えていた。
ライトハンドで物足りなく感じればレフトハンドにも挑戦した!
時にはギターソロのように情熱的に激しく!
時にはバラードのようにフェザータッチで・・・。
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楽器は残酷な天使のテーゼで速弾き=カッコいいにはならない。
気持ちがいい旋律や音色でないと雑音でしかない。
私には全てが不足していて、ただギターの弦をやみくもに弾く猿だった・・・。
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そんな猿にも漢になるチャンスが遂に訪れた!
長い長いトレーニングを発揮するステージは暖まっている。
ギターアンプの真空管は熱々!
ウォーミングアップなんて必要ない。
ジャブから渾身のアッパーを相手の急所に突き刺すまでだ!
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ジャブ!
ジャブ、ジャブ!
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しゃぶ!
しゃぶ、しゃぶ!
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相手はダウン寸前だ!
「たたみかけろ!」
セコンドから声が聞こえる。
全てはこの一瞬のために生きてきた。
「渾身のアッパーをおみまいしてやる!」
その時だ!!
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チェリーがダウンしている!?
???
「あれぇ・・・!?」
「なしてぇ・・・!?」
カウンターでももらったのだろうか・・・!?
違う!!!
いづれにせよ、ファイティングポーズを10カウントまでにできなければ試合終了だ・・・。
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ジョー・・・
立て・・・。
立て!!
立つんだジョ~~~~~~!!!
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残酷な10カウントが鳴り響き、試合に負けた・・・。
漢として情けなくひとり泣いた。
大好きなBOØWYのCLOUDY HEARTが聴こえる・・・。
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「とっつぁん・・」
「おらぁ・・」
「恥ずかぁしいぃ・・・」
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おっと、もうこんな時間だ・・。
私としたことが少々おしゃべりが過ぎたようだ・・。
別の話はまたお会いできる時にでも・・。
今日も貴方にとって素敵な夜でありますように・・。